余韻

「余韻」

レースで縁取る日記帳
昨日の私を彩って
色鉛筆のグラデーション
曖昧な愛を慰めて

夢うつつの中思い出を
手の平でまた再生して
カメラで切り取る外側を
思い出すこともなくなって

言葉に託した連想を
並べ替えては見失なう
確かな温度だけ信じた
私の心に響くもの

空転

「空転」

晴れの日を待ちわびる
砂時計が落ちるまで
夕刻の哀愁に
寄り掛かって息を吐く

水たまりを撫でる風
窓の外の情景詩
波紋ひとつ揺らすたび
チョコレートが溶けてゆく

読みかけの本を閉じて
机に放り出したきり
溢れかけた停滞を
今はまだ引き延ばして

明日の音色浮かべたら
光の色移ろいで
独りのメリーゴーランド
きらきらと繰り返す

「扉」

積もり積もって
心をうずめて
奥底は息が持たなくて

遠くの光が
ぼんやり霞み
視界はくらり崩れ出す

ほんの小さな
温もりだけが
此処が今だと知らせてる

風が止むまで
波が引くまで
この心をまだ閉じさせて

周回

「周回」

冷たい風が吹き抜ける度
やけに後ろを振り返ってしまう
期待はいつも形を持たずに
徒に枯れ葉を巻き上げる

どうして今も探しているの
どんな幸せも過去になるのに
愛しい温度を憶えていても
この寂しさは埋まらないのに

重たい音色が軋む扉を
閉じれないまま夜が明けたら
朝の光は祝福のように
君と同じ世界を包み込む

どうして今も恋焦がれるの
どんな幸せも降り積もるのに
愛しい温度を思い返せば
溢れるほど満たされるのに

紙吹雪

「紙吹雪」

何かになれそうな期待とか
何かを失う不安とか
図々しい感情を纏っては
無理に手を伸ばしてしまうんだ

ちっぽけな僕じゃ届かなくて
思ったより距離は果てなくて
勘違いを重ねた世迷言が
もしもエールになったのなら

きっと僕の存在は
君の人生に降る紙吹雪だ
重なった道で君の今を
鮮やかに祝福して消えてゆくんだ

ちょっと派手に散らしただけさ
だから前が霞んで見えるんだ
いつだって君の目の前は
輝かしい未来の光が照らしてるんだ

星屑夜道

「星屑夜道」

道端の小石に躓くような
暗がりの旅路に怯えてる
身軽な荷物はやけに心を
さらけ出してしまいそう

何処にも留まれない
はやる気持ちが時計を回す
大人になれない願いが
情けなさを引きずってゆく

小さな星の灯を辿って
地図にない未来を探してる
仄暗い夢をまだ抱いて
忘れたくない想い
この夜が果てるまで